第三章 嵐は突然に

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[1] 来る二〇二〇年。この日本の首都東京に、四年に一度の世界的なスポーツの祭典であるオリンピック・パラリンピックがやってくる。 その2020東京五輪で、【Tohma】は大会オフィシャルパートナーを務めている。 その為、グループ全社を挙げ、来るべき二〇二〇夏に向けて様々な企画を準備している真っ最中だ。 中でもグループの主力商品であるビールを扱う私たちトーマビールには、売上予算の比重の多くが占められ、莫大なスポンサー料に見合う、いやそれ以上の売り上げ効果を求められているのだ。 けれど売上云々はもとより、五十六年ぶりに日本で行われる世界的なスポーツの祭典を、日本企業に勤める日本人として、一緒に盛り上げて行きたい。私たちマーケティング部員は、そんな気持ちで企画に取り組んできたのだ。 幾つかある企画のうち、これから大詰めを迎えるのが【TohmaBeer(トーマビア)-Hopping(ホッピング)】。 私たちのチームが中心となって進めてきた企画だ。 【TohmaBeer-Hopping】とは、【Bar(バー)Hopping(ホッピング)】すなわち『はしご酒』に(ちな)んだもので、大会期間中、東京を中心とした首都圏近郊のレストランや居酒屋で【Tohma】の提供するドリンクを“はしご”出来るというイベントだ。 ちなみに【Tohma】は全グループを合わせた総称で、グループ各社の商品を合わせることで、ビール以外にもワインや酎ハイ、ソフトドリンクなど幅広く提供することが出来る。 現段階では大まかな企画しか決まっておらず、これから参加店舗や参加方法などを細かく決めていくことになる。 発案したのは私だけど、思ったよりも大規模になってしまい、企画というよりは“プロジェクト”と呼んだ方がふさわしい予算まで頂いてしまった。 しかも、どうせならと、ビールや酎ハイ以外にもワインやソフトドリンクも、と欲張ったため、グループ全体を巻き込んだものとなったのだ。 そうなると我が社だけでは決められないことも多く、グループの橋渡し役として親会社の【Tohmaグループホールディングス】から高柳さんが統括マネージャーとしてやってくることになったのだろう。
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