第三章 嵐は突然に

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[2] 「青水主任。私はそろそろ…」 隣から掛けられた声にハッとなって時計を見ると、いつのまにか六時を過ぎている。 窓の外はいつのまにか真っ暗だ。 大澤さんは契約社員なので、よっぽどのことでもない限りは定時きっかりに帰っていく。 結婚している彼女は、毎日仕事から帰って夕飯の支度をしているという。 「うちはまだ子どもがいないから、そんなに大変じゃないですよ」と彼女は言っていたけれど、会社で仕事をした後に更に帰宅後も“家事”という名の仕事が待っているなんて大変だな、と思う。家事、特に料理の苦手な私には、上手くこなせる自信はない。 (結婚生活は私には向かないわ……一人で生きていくために、仕事だけはしっかりしないとね) 「大澤さん、お疲れ様でした」 「主任もお疲れ様です。お先に失礼します」 大澤さんのうしろ姿を見送った後、パソコンモニターに向き直った。
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