第三章 嵐は突然に

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「んん~~っ、終わったぁ!」 椅子の背に体重を掛けながら背伸びをすると、椅子がキィッと音を立てる。 周りを見るとオフィスにはもう私しか残っておらず、私の頭上周辺以外の電気が消されていて、広いオフィス内は真っ暗だ。 同じように真っ暗な窓の外に目を遣ると、いつのまにか窓ガラスが濡れていた。 「雨降ってたんだ……」 本州に接近している台風十七号のせいで大気が不安定になり、今夜未明から雨が降ると天気予報で言っていた。 「雨足、早まっちゃったんだ…」 常備してある折り畳みの傘を取り出そうと、デスクの引き出しに手を掛けたその時 ―――ピカッ 「っ!」 暗いオフィスがストロボを焚いたような光に照らされる。 私は反射的にその場にしゃがみ込んだ。 辛うじて悲鳴を飲み込めたのは、社会人して培ってきた矜持のおかげ。 職場でカミナリに取り乱すなんて、いい大人のすることじゃない。 たとえ私以外に誰もいないとしても―――。
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