第三章 嵐は突然に

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[3] 始まったばかりの蒸し暑い夏日だった。 そこかしこから聞こえ蝉の声がこれから長く続く暑い日々を思わせる中、私は大学の授業が終わった後、待ち合わせをしたと共に街にショッピングへ繰り出した。 まどかは私とは別の私立大学に通っていたが、路線が一緒だったこともあって、割と頻繁に会っていた。 初めての失恋をしたことをきっかけに、自分の外見に少しずつ気を遣うようになっていた私にとって、まどかは良いアドバイザーだ。 『ほら、ゆっかちゃん、これなんてすごく似合うと思うよ!』 『それはちょっと私には可愛すぎじゃない?』 『そんなことないってば!騙されたと思って試着してみてよ』 そんな遣り取りをしながらいくつかのお店を見て回り、目的の物もちゃんと購入出来た。休憩がてら入ったカフェで食べたチーズケーキが美味しくて、お母さんへの手土産にテイクアウトした。 まどかとの会話はずっと途切れることなく、楽しく過ごした私たちは夕方六時を回ったところで帰路に着いた。 『通り雨でも来そうな感じだね』 車窓から見える西の空は、どんよりとした黒い雲で覆われている。 『家に着くまでもつといいんだけど……』 梅雨が明け本格的な夏が始まったばかりの今日。日中は恐ろしいほどの陽射しが照りつける快晴だった。まさか雨に遭うとは思わないから、傘は持っていない。 高校の同級生であるまどかとは、最寄駅は三つしか違わない。まどかが降りる駅が来るまで話に花を咲かせた私たちは、空模様のことなどすぐに忘れてしまった。
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