第三章 嵐は突然に

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滑るように走る車。車の外は雨と風は強いが、深夜時間なので車は少なく道路は空いている。目の前で行ったり来たりするワイパーだけが、どこか忙しない。 短い遣り取りの後、沈黙した私たちを、窓ガラスを叩く雨垂れとラジオのアナウンサーの声だけが静かに流れていく。 ―――なお、落雷の影響で一部地域が停電となっており、現在復旧の目処は立っていないとの―― (あの時のカミナリのことかな……) 近くに落ちるほどのカミナリを経験したのはこれで二回目だ。 (もし統括が来なかったら私今頃……) 冷たい床の上に何時間も横になっていた上に、帰宅することも儘ならなかったかもしれない。 高柳統括には余計な手間を掛けさせてしまったが、助けてもらって本当にありがたい。 (今度ちゃんとなにかお礼をしよう) 頭の中でアレコレと考えを巡らせていると、「おい」と横から声を掛けられた。
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