第三章 嵐は突然に

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コンビニの駐車所に車を滑り込ませると、シフトレバーをパーキングに入れた彼は、シートに背中をもたせかけ、ふぅっと息をついた。 「あのカミナリが落ちたんだろうな」 「………」 エンジンを切ったためラジオも止まってしまったが、さっきまでの情報から、カミナリが送電線に落ちたことによる停電だということは分かっている。 「かなり広範囲での停電らしいから、このまま停電地域に向かうのは危険だ」 「どうして…」 「道路の信号も停電で消えているだろう」 言われてみればその通りだろう。そんな簡単なことにまで頭が回らない自分はやっぱりパニックになっているのだろう。 「交通量は少ないが、信号が消えている中を走らせるのは安全とは言えない」 「そうですね……」 結局帰宅不可能になってしまった。 「今から泊まれるホテルを探します」 「明日は始発から鉄道各社の運休が決まっている。すでにホテルは満室だろう」 「じゃあどうしたらっ」 思わず声を荒げてしまう。不安と焦りで思考と感情が制御しきれない。 「目的地を変更する。俺の家へ向かう」 淡々とした声で述べられたその言葉に驚いて、勢いよく右を向く。そこにはいつもと変わらず動くことのない端整な横顔があった。
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