第四章 思いがけない避難先

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[1] 「好きに過ごしてくれていい。俺もシャワーを済ませてくるから」 着くなり入浴を勧められ、避難先に家を借りるこちらの遠慮など一蹴して私をバスルームに追いやった高柳統括は、烏よりも早く水浴びを済ませた私にその言葉を投げると、自分もバスルームへと入って行った。 「好きに…って言われても……」 初めて訪れた職場の男性の自宅で、風呂上りに男物のTシャツとハーフパンツ、という無防備な姿で堂々と寛げる女が居たら見てみたい。私が知らないだけで彼にとっては普通のことなのかもしれないけれど、少なくとも私にはそんな度胸は無い。 (一人暮らしの男性の部屋に泊まるのだって、初めてなのに……) 同じ家で一晩過ごしたことがある異性は、紀一さんと結城君だけ。もちろんそれぞれの奥様も一緒だ。 そわそわと落ち着かない気持ちを持て余した私は、リビングの中央に置かれたソファーの端っこにちょこんと腰を下ろした。
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