第四章 思いがけない避難先

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ソファーに座ったままぼんやりと窓の方を見る。カーテンが閉まっているから外の様子は見えないが、激しい雨音と時折吹きつける突風で窓ガラスがカタカタと揺れていた。 (カミナリ…もう鳴らないよね………) こんな時、自宅だったら布団を被ってイヤホンで音楽を聞きながらやり過ごす。 けれどそれが叶わない今、ソファーの窓から遠いすみっこで膝を抱えていることしか出来ない。 ひと際大きな音を立て窓がガタガタと鳴った。その音に体がビクリと反応する。 「―――もうカミナリは鳴らない」 真後ろから掛けられた声に、さっきよりも大きく肩が跳ね上がった。 「お、おかえりなさい」 動揺から意味不明な声を掛けてしまう。すると、高柳統括はかすかに眉を上げた後、「ああ…」と口にした。 「もしまたカミナリが鳴っても、この低層マンションよりも他に落ちるところが沢山あるだろう」 「……はい」 なにやら物騒な話をされているけれど、私を安心させようとしていることは伝わってきたので頷いておく。 「何か飲むか?」 そう訊かれ、私はハッと思い出した。 おもむろにさっきのコンビニの袋をガサガサと漁り、中から取り出したものを目の前のローテーブルに置く。 「……やたら買い物袋が重そうだとは思ったが」 呆れたような台詞が降ってきた。それもそのはず、私が取り出したのは、麻の葉文様の下にTohmaと書かれたロゴの付いた缶。 そう、トーマビールの主力商品【トーマラガー】。ビールだ。
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