第四章 思いがけない避難先

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(統括の口に合うものが無かったのかも。好き嫌いとかアレルギーとか確認しなかったし……) もしかしたら明日になっても入荷がないかもしれないと思った私は、余っても明日の朝に食べられそうなものや日持ちのするものを手当たり次第にかごに入れたのだ。といっても、台風と時間帯のせいで店内の棚はほぼ空だったから悩むことも無かった。 「めぼしい商品はほとんど売れてしまっていて、こんなものしかなくて……すみません」 一泊の礼がこんなものかと思われたのだろうと、私は内心で汗をかく。 「あの、泊めて頂くお礼はきちんとまた別の時にしますので……」 恐る恐る付け足した言葉に、今度はすぐさま反応があった。 「いや、それはいい。礼はこれで十分だ。」 はっきりとした口調はまるで『お前との個人的な接触はもう結構だ』と言われているようで、私は口をつぐんだ。 「食事のことまで気が回らなかった…台風の影響で明日以降も食料調達も難しくなるかもしれない。そのことをすっかり失念していたから助かったよ。ミネラルウォターまで…ありがとう」 そう言うと高柳さんは、奥二重のスッキリとした目元を薄く緩ませた。
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