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王宮使用人や守衛の目につかないようにラグラスに僕は屋内の訓練場に案内された。
そこには、すでにメルフォーゼの姿があったので僕は慌てて主人の下に駆け寄る。
『へえこの、ちっさくてキラキラしているガキがね…。メルフォーゼも力を使わないとこんなガキ見て死んじゃうの?』
急に背後から声がして振り返ると、アクアジェイルと呼ばれていた青年が僕の顔を覗き込んでいた。そして小馬鹿にするようにケタケタと笑っている。
僕は驚いて尻餅をつき、とっさに顔を腕で覆った。
『俺は大丈夫だよ。』
顔から腕を引きはがされ、僕はアクアジェイルと顔を合わせた。しかし、彼は軽快に笑うだけだ。
『俺は古代水竜アクアブレスだからね。人間の見た目の良し悪しとかよく分かんねえの!』
アクアジェイルは先ほどの中庭で見たときの雰囲気とはだいぶ異なり、チャラチャラした印象を受けた。
『アクアジェイル。』
メルフォーゼの怒気を孕んだ低い声が訓練場に響いた。完全に虫の居所が悪い様子だった。
アクアジェイルは「んじゃ僕は外で見張りしてるから。」とこの最高に機嫌の悪い主人を置いてそそさと出て行ってしまった。
行かないでと僕は心の中で彼を呼び止めたが、その声が届くことはなかった。
『メ、メルフォーゼ様、僕に魔力の制御を教えてくださるとお聞きしたのですが…。』
僕の質問には答えることなく、コツリ、コツリとメルフォーゼは僕に歩み寄ってきた。そのたびに僕の心臓の鼓動は速さを増し、酸素が薄くなっていくような感覚がした。ちらりと見えた赤い瞳に全身が竦んだ。
『魔法を発動するためにはマナと魔力が必要だ。魔力は使用者の能力に比例した限界があるが、マナはすぐに生成され限界もない。』
ハッと僕は顔を上げた。
『だが、大量の魔力を消費することでほんの数秒マナがない空間を作ることができる。マナがなければ魔力を消費することができず、魔法は発動しない。』
メルフォーゼは僕に掌をかざした。
『今から俺の魔力で、この空間をマナがない状態にする。魔力が消費できない感覚を覚えろ。』
え、と思ったときにはすでに遅かった。急に、水の中にいるみたいに苦しくなり、全身がみしみしと悲鳴を上げた。
『う、うがああぁあぁあ。』
気付いたら、僕は地面にひれ伏していた。どうやら失神をしていたらしい。
『立て。もう一度だ。』
容赦なく主人は僕を取り巻くマナを消費する。
『待ってだ、うあぁあぁあ!!!!!』
考える時間さえ与えられなかった。
『イメージしろ。己の体内に留まらせ、巡らせる。』
行き場を失った僕の中の魔力が、僕の身体を引き裂いて暴走する。
『いっ、ああぁああぁ。』
殺される、と僕は思った。
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