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0 始まりの法
「そろそろ、向こうの準備もできた頃だろう」
半ば投げやりな声を上げた白衣の人影に、気怠く頷く。
今日、自分は、永遠の眠りにつく。そして、私の内臓は、病気の人々に移植するために、この身体から取り出される。
脳は壊れているが、内臓はまだ若々しい。かつての主治医の言葉が、耳に響く。どうでもいい。次に響いたのは、自分の声に聞こえない、私自身の声。どこか遠くで勝手に決められた法に従う形で、死ぬだけ。ただ、それだけ。消えていく意識が、小さく叫ぶ。
……どうでもいい。
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