プロローグ

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事の始まりは2ヶ月前、とあるバイトサイトを見たことだ。 『とある女性と暮らしませんか』 ───普通だったら見逃してしまうような小さく地味な記事。しかし、それに僕は何となく興味を持った。人身売買か?それとも、新手の詐欺?訝しみながらも好奇心に負け、僕はマウスをダブルクリックする。 そして、サイトを上から順にスクロールする。どうやらある女性と1ヶ月暮らすと報酬が貰えるらしい。彼女すらいない僕にとって、それは魅力的な企画であった。僕はモテない。とことんモテない。自分で言うが、顔は中の上はあると思うし、ビジュアル的には人並みであると思う。しかしモテない。初めて彼女が出来たのは大学4年生の冬。愛し合っていたはずの彼女は「普通過ぎてつまんない」などと言って鎖とピアスまみれの男の元へさっさと行ってしまった。ショックで次の日に熱を出して寝込んだのは内緒だ。 その言葉が呪いのように僕の胸に突き刺さり、それから僕に彼女が出来る事はなかった。気になっていた子といい感じになってもふとあの言葉が脳裏に蘇り、尻込みしてしまう。そうしてうじうじしている間に他の男に攫われてしまう。 パソコンの画面を眺める。これはチャンスなのではないか?どうせ1ヶ月間だけの関係だから失敗を恐れる必要もない。ここで女性に慣れる事が出来れば恋人を作るのに一歩近付くのではないか。正直、32歳という焦りもある。 詳しく読み進める。どうやら人数制限があり、抽選で当選者を決めるらしい。 正直めちゃくちゃ怪しい。世の中にそんなオイシイ話がある訳ない。しかしこんな魅力的な企画なかなかないぞ。逃す訳にはいかない。悩みながら、サイトをぼんやりと流し読みする。と、ある文章が目に飛び込んできた。慌ててそこまで戻る。 「……何だって?」 『注:但し、女性は人間ではありません』───────
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