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シーーーーン。沈黙。
エアコンのぶおおおおという音が嫌に大きく聞こえる。窓の向こうで蝉の鳴き声が微かに聞こえる。
玄関の鍵を閉めた僕は、チラリと彼女の方を見た。彼女は先程と同じようにテーブルの前に正座し、じっと下を見つめている。そりゃあそうだろう。いきなり知らない男の家に連れて来られたんだから。僕は彼女が少し可哀想になった。
落ち着かないのは僕も同じだ。住み慣れたアパートの一室に、お人形さんみたいな女の子がちょこんと座っているのだ。まるで合成写真を見ているような気分になる。
何となく気まずくて、小林が置いていった紙をテーブルから拾い上げ眺める。彼女の取り扱い説明書らしい。これがホントの女の子のトリセツって訳か。こんな3枚程度の紙ペラに彼女の全てが書いてあるなんて、本人はどう思っているのだろうか。
彼女に視線を移す。相変わらず固い表情でじっとテーブルを見つめている。ここは僕からアプローチするべきだよな。男だろ、僕!しっかりしろ!彼女にバレないようにこっそりと深呼吸する。ペチペチと頬を叩く。
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