彼以外に興味が湧いて

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彼以外に興味が湧いて

「…具合いでも悪い?」  ふいに、まこちゃんが顔をのぞきこんだ。 「えっ?うっううん。全然。」  あたし、慌てて作り笑顔。  神様、嘘つきなあたしを許してください。  あたしは、昨日…誕生日を迎えた。  そして、せっかく時間を作ってくれてたまこちゃんの誘いを。 「学校の友達がね、パーティーしてくれるって…高校最後の誕生日だし、いい?」  って…断わって、(むら)さんとバイクで遠出してしまってた。  まこちゃんのことは、もちろん大好き。  だけど…邑さんはとっても刺激敵な人で…  佐和(さわ)の言う「青春謳歌」が、そこにあるような気がしたりして。 「18歳、おめでとう。」  まこちゃんが、いつもの笑顔で言ってくれた。 「ありがとう。」  あたしも、笑顔を返す。  今日は珍しく…夜のデート。  とは言っても、きっと八時には送られちゃうんだけど。  キラキラきれいな夜景。  (むら)さん、今度バイクで連れて行ってくれないかな…  …あたし、まこちゃんと一緒にいるのに、(むら)さんのこと考えてる。 「鈴亜(りあ)、進路、どうなった?」  この間から、よく聞くなあ。 「まだ決めてないよ?」 「……」  まこちゃんは照れくさそうにポケットに手を入れて。 「これ、プレゼント。」  って… 「…まこちゃん…」  あたし、目を丸くしてしまった。  だって、まこちゃんが差し出したのは…ダイアモンドの指輪。 「結婚しよう。」 「……」  どうして?  以前なら、嬉しくてたまんなかったはずよ?  なのに…何?  この………絶望感。 「あ…あの…」 「?」  あたしは、意を決して切り出す。 「まだ…早くない?」 「…鈴亜(りあ)、早く結婚したいって言ってただろ?」 「そ…そうだけど…その…」 「…イヤ?」  まこちゃんの瞳が、曇ってしまった。 「イヤじゃない。そうじゃなくて…その…」 「何。」 「ほら、まだ若いんだし、そんなに早く青春を終えることもないかな、なんて。」 「……」 「ごめんね…せっかく、言ってくれたのに…」  上目使いでまこちゃんを見上げると。 「…いいんだ。」  少し、寂しそうな声。  まこちゃんは指輪を箱にしまうと。 「じゃ、これは保留。」  って、ポケットに納めてしまった。  まさか、まこちゃんが考えててくれたなんて。  すごく嬉しいはずなのに…  あたし、すごく嬉しいはずなのに…。
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