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時刻は19時ちょっと前。 予定より少し早く銀座に到着することができた。 【銀座着いたけど、どこにいる?】 一弥にメッセージを送ると、私は辺りを見回した。普段からこの通りは華やかだけど、クリスマスを目前に控えているからか、そこかしこに電飾が張り巡らされている。 去年のクリスマスはどうやって過ごしたっけ。 記憶を呼び起こして、腹の底が重くなった。 当時付き合っていた彼が予約してくれたクリスマスディナーに行けなかったのだ。顧客とのトラブルで呼び出されて、営業所員総出で対応した。待ち合わせの時間に一時間遅れた私を、彼は待ってくれてはいなかった。これまでも、仕事の都合でデートをドタキャンしたことは何度かあった。でも、彼は仕事ならしょうがないよって笑顔で慰めてくれた。だから、そのときも大丈夫だと思っていたのだ。 『もう遥のこと待つの疲れちゃったんだ』 電話越しに彼はそう言った。きっとこれまでも我慢していたのだろう。私には彼を引き止めることはできなかった。恋人たちが幸せに過ごしているであろう日に、私はフラれたのだ。 ああ、そういえば。 デートに間に合わないと半泣きで営業所を後にした私に一弥は心配して連絡くれたっけ。それで、私のヤケ酒に付き合ってくれたのだ。 思い返すと辛いときには一弥がいてくれた。 あのときも、そのときも……。思い出すたびに心に灯りが(とも)っていく。 「遥」 声がするのとほぼ同時に肩を叩かれた。 振り返ると、鼻の頭を赤く染めた一弥が立っていた。 「走ってきたの?」 「うん、ちょっと」 そう言いながら重ねられた一弥の手はすごく温かかった。
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