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部屋に入って、私は驚いた。 食卓には料理が並んでいる。まるで、さっきのレストランみたいな。 「すぐ温めるから」 そう言いながら、一弥は(せわ)しなく動いている。 湯気とともに美味しそうな匂いが部屋に広がった。 「これ、どうしたの? 一弥が作ったの?」 「いや、作れたら最高なんだけど、さすがに無理。お店の人に、また絶対来るからって言って、料理持ち帰らせてもらったんだ。めちゃくちゃ親切でさ、料理ごとに一番美味しい温め方とかも教えてくれてさ」 最後に冷蔵庫からワインを持ってくると、早く食べよう、と言って食卓に座らされた。 料理はもちろんどれも美味しくて、でも、それよりも二人でこの時間を過ごせていることが嬉しかった。 「一弥、私のこと待っててくれて、ありがとう」 そう伝えると、一弥は目を細めて笑った。 「最後にデザートもあるけど、食べれる?」 「もちろん。あ、私も手伝うよ」 立ち上がった一弥についていこうとすると、遥は座ってて、と椅子に押し戻された。カチャカチャと食器を準備する音が聞こえて、期待が高まる。 「遥、これからそっち行くけど、ちょっと目瞑って待ってて」 「え、わ、わかった」 そんなにすごいデザートなのか、とついつい口角が上がってしまう。 コト、と食器が置かれる音がした。 「もう目開けていい?」 「まだ」 そう言った一弥が私の左手を掬い上げる。ひやりとしたものが、薬指に触れる。 「もういいよ」
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