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いくつかの記憶の断片が、少しずつ繋がっていく。
いつも静かに私のそばにいてくれた男の子。
私と同じくらいの小さな手の温かさ。
そして、タンポポのプロポーズ。
きっと私は良い返事をしたのだろう。
幼稚園では私たちは将来を誓い合った二人として揶揄われるようになって。
『はるかわはるかって変な名前だよな』ってクラスの男の子にバカにされて。
それで……それが恥ずかしくて、私は一弥くんとは絶対結婚しないからって言って……そのままロクに話もしないまま小学校にあがった。いつしか私はそんな思い出も忘れてしまっていたのだ。
「もしかして、一弥ってその頃からずっと私のこと好きだったの?」
「いや、ずっとってわけじゃ……一回フラれてるしね」
一弥は口を尖らせてそう言った。その顔がちょっとかわいくて、一弥の顔を覗き込むと、なんだよ、と怒られた。
「一弥って私に三回もプロポーズしてくれてたんだね」
「遥は最後の一回しか覚えてないだろ」
頬をむにっとつままれる。いつも温かい一弥の手は、やっぱり指先まで温かい。
「最初のも思い出したよ」
つままれたまま返事をすると、それは思い出さなくてよかったのに、と一弥は眉尻を下げて笑った。手を掴んで一弥との距離を詰める。
「ねぇ、それじゃあ、私のこといつから好きだったの?」
ずっと気になっていた。どうしても聞いてみたかった。
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