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長い春休みもいよいよ終わりが近づいてきた三月中旬。寒い日が続いていたが、突然の春の暖気に、桜たちが蕾を膨らませ始めていた。
「すぐ満開になりそうだね」
街路樹に並んだ桜の木々を眺めて、シュンロンは想像する。去年はここを、涼夏はおろか誰かと肩を並べて歩くなど考えもしなかった。
涼夏と付き合い始めて、九か月が経っていた。
一時はすれ違いもあったが、シュンロンの秘密がばれてから大きな衝突もなく、うまくいっている。彼の隣にいるのが自分という事実が、時々不思議になるくらい。
涼夏はこの半年で一段と格好良くなっていた。恋人の欲目かもしれないが、すれ違い様に視線を飛ばす人が増えている気がする。あと背は伸びている、絶対。
不意に吹き抜けた冷たい風に、シュンロンは身を縮めた。
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