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第2話
(葉那斗、俺はお前の笑顔が好きだ。)
(へへっ、俺も木綿治さんの笑う顔が好きです。)
(ありがとう葉那斗。
俺、お前の笑顔を曇らせたりしないよう支えていくからな。
葉那斗を愛してるから。)
ある日の何気ない日常から出た会話だった。
今はもう聞けない言葉。
木綿治さんはきっともう忘れてしまってるんだろうな。
「今日の夜ご飯は何にしようかな。」
木綿治さんは今日も俺の作ったご飯を食べないだろうけど。
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カチャン
「よし、出来た。」
今日の夜ご飯は、煮物とおろし大根添えの秋刀魚焼きだ。
木綿治さんは今日も食べないだろうなんてことは分かってる。
でも、やっぱり俺の作ったご飯を食べて欲しいんだ。
また、俺のご飯を食べて、美味しいって言って笑う姿を見たいんだ。
木綿治さんの笑う姿が、俺は好きなんだ。
俺なりに木綿治さんを支えたい。
笑顔にさせたかった。
それが、毎日のご飯だった。
ご飯は一日一日に欠かせないもの。
でも木綿治さんはいつも忙しくて、外食かコンビニ弁当が多かった。
だから俺はそんな木綿治さんのために、毎日朝昼晩とご飯を作ることにしたんだ。
普段ちゃんとしたご飯を摂らない木綿治さんのために。
初めは勿論喜んで食べれくれた。
美味しいっていつも言ってくれた。
食べてる時に不意に笑顔も出ていた。
けど、今は違う。
最初に、食べても笑みを零すことが無くなった。
次に、美味しいって言ってくれなくなった。
…最後は、朝も昼も夜も、俺の作ったご飯を食べることがなくなった。
いくらつくっても、木綿治さんは食べようとしなくなった。
作っていた弁当でさえ、も。
今の俺、木綿治さんに何もしてあげれてない。
俺、なんのためにいるんだろう。
俺って、ちゃんと木綿治さんの恋人でいられてるのかな。
「…今日も、木綿治さんの帰りを待と。」
作ったご飯から出る湯気は鳴りを潜めるかのようにあっという間に冷めていった。
それはまるで、今の俺と木綿治さんとの仲を表してるかのようだった。
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