第2話

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━━━━ガチャ 木綿治さんが帰ってきた。 今日は9時か。 あの日よりははやいかな。 俺は木綿治さんのいる玄関へと向かった。 そして俺はいつも通り"おかえり"を言った。 「おかえりなさい、木綿治さん。」 「………。」 スタスタスタ━━…ガチャン ここのところ、木綿治さんは俺を無視するようになった。 おはようもいってらっしゃいもおかえりもおやすみも、全部全部。 どうやら木綿治さんは俺を完全に無視を決め込むようにしたみたいだった。 …え? なんでそんな平然としていられるかって? それは多分、慣れかな。 確かに簡単に無視決め込まれた時は本当にショックだったよ。 また泣いたよ。 心が引き裂けそうになって、苦しくて痛くて。 俺、本当に木綿治さんの恋人なのかって思ったよ。 もう、木綿治さんの心に俺は、いないのかなって思ったよ。 でも、やっぱりそれでも木綿治さんのことを嫌いになれなかった。 俺は、木綿治さんをまだ愛してたんだ。 本当はもう俺はここにいるべきじゃないって分かってる。 でも、木綿治さんが言わない限り俺は、まだここに居たかった。 木綿治さんが好きだから。 だから傍を離れたくなかった。 「…木綿治さん、今日の夜ご飯は煮物と大根おろし添えの焼き秋刀魚を作ったんです。 今日は夜ご飯……食べないですよね。」 「………………。」 「分かりました。 今日も食べない、んですね、木綿治さん。 じゃあ、片しておきますね。 でも、木綿治さん。 たまには俺の作ったご飯を食べてくださいね。 俺、これくらいしか木綿治さんのためにできることがないから、だから━」 ダン!! 「!!…ごめん、なさい木綿治さん。 俺、離れますね。 おやすみなさいです、木綿治さん。」 壁を殴る音が木綿治さんのいる部屋からした。 あぁ、またやっちゃた、俺。 木綿治さんを怒らせてる。 無理って分かってるのに、ついしつこく言ってしまった。 何やってんだ俺。 気をつけないきゃダメだろ。 じゃないと、余計木綿治さんに嫌われる。 それだけは嫌なんだ。 だから俺は、木綿治さんに一言謝りそう言ってそそくさとその場を離れた。 リビングに戻って木綿治さんが今日も食べなかったご飯を冷蔵庫にしまった。 そして俺は、木綿治さんを待ってて食べてなかった自分の分を食べようとした。 食べようとしたんだ。 「ッ!?…ウッ━━」 ダダダダダダダダ━━━ガチャッ!! 「うぇ…ゲホゲホ!…ウッ………っ。」 胃にあるものがせり上がる。 突然の吐き気が、俺を襲ってきたんだ。 俺は急いでトイレに駆け込んだ。 大して今日は食べてなかったせいか出るものは少なかった。 それでも、酷い吐き気が襲って、出るもの全部出たあとも、吐き気は止まらなかった。 吐き気が収まってリビングにまた戻った時、俺はまた自分の分の夜ご飯を食べようとした。 でも、何故かまた吐き気が俺を襲った。 おかしいな、俺。 なんでいきなり吐き気なんて。 今までこんなこと無かったのに、なんで。 パキパキッ 結局俺はそのままご飯を食べることが出来なかった。
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