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レイはキッチンへまわり、すぐにロウソクの点いたケーキを慎重に持ってきた。
分かった! ロウソクの火を吹き消すと隣の部屋から人が出てくるんだ。
「ユノ! 誕生日おめでとう!」
「わぁ~。ありがとぉ」
「ハッピーバースデイ歌う?」
「ふふふ。二人で歌うのも気持ち悪いから、吹き消していい?」
「ははは。いいよ」
「じゃあ、消すよ? せーの……ふーーーーっ!!!」
「お? あ、こっち、まだ」
二十八本(多分あるだろう)ロウソクを全部消す。
消し終わるとレイが大きな拍手をしてくれた。
「おー。おめでとー!」
「??」
吹き消したけど、誰も出てこない。俺はソファから立ち上がった。
「え? ユノどうしたの?」
「いるんでしょ?」
「は?」
リビングの隣の部屋を覗く。寝室だった。電気を点ける。誰もいない。
「ユノ?」
キッチンも無人。風呂も押入れもトイレも、ウォークインクローゼットも無人。レイがポカンとして俺を見てる。でも俺だってポカンだ。
「……誰もいないの?」
「え……俺たち以外に?」
「そう」
「いないよ?」
「……うそ」
なに? なんなの? レイどういうつもり?
「とりあえず、座ろうよ。ケーキ食べよう。コーヒー淹れるから」
「…………」
ソファに腰を下ろし、いそいそとコーヒーメーカーのスイッチを入れるレイを見る。
コーヒーができて、レイがケーキを切り分ける。下手くそだったけど、ツッコミを入れる余裕が無かった。
考えていたんだ。一体これがなんなのか。
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