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地域に住む幼なじみたちと立ち上げたNPO法人。
ボランティア役員を引き受けて二年めの終り、役員交代の時期となりました。
共に会計を担当していたHさん、三歳年上の人です。
「今までありがとう。
とても助かりました。
お礼と言うのも変だけど、どこかドライブに連れて行ってあげたいんだ。
どうかな。」
それは全く思いもしないことでした。
嬉しくないはずはありません。
ひそかに憧れていた人からの誘いです。
「えっ、行きたい。行きたいです。」
「じゃあ、どこがいい?」
「どこでも!お任せします。楽しみに待ってます。」
その日、約束の時間に迎えに来てくれました。
二時間のドライブでついたのはフェリーの出る港でした。
灯台のある高台、ターミナルビル、焼いた貝やイカの売店、ゆっくり見たり、食べたりしました。
「フェリーの旅も良いだろうなぁ。」
「職場の仲間で乗ったことあるよ。
約一時間だから丁度いいんじゃないかな。
みんなで来れたら楽しそうだね」
浮かれていた私はフェリーを見て気がつかなかったけど、チヨットだけ??って思ったのです。
「ちょっと寄り道するね。」
一時間ほど走った時、波うちぎわの駐車場でシートを倒しながら言いました。
「三十分寝かせて。やっちゃんも寝たら?」
そんなこと、できません。
それてなくても、朝からずっとドキドキしてたのに。
「急用で朝早かったから、ゴメン。」
私はシートを倒すこともせず、ドキドキしたまま海を眺めていました。
そして、時々こっそりと寝顔をチラ見しては喜んでいました。
三十分ほどたって
「ありがとう。お待たせ。」
スッキリしたようには見えなかったけど、帰り道に戻りました。
直後に驚いたことがあります。
目立たなかったけど、近くにラブホがあったのです。
その時、初めて気がつきました。
そういうことを私としたかったのですか?
フェリーの旅もしたかったのですか?
二回目のお誘いだったのですか?
二回目ありませんでしたね。
「やっちゃんは一人っ子だから、僕が行こうかな」
あれ、本気だったのですか?
シートを倒していたら私に触れてくれましたか?
その先もしてくれましたか?
同じ町に住んでいるのに、あれ以来一度も会ってないですね。
やっぱりご縁がなかったのでしょうね。
もしあの時、二人のどちらかが違うことをしていたら、どんな人生になったでしようか。
Hさん、私はあなたの思い出の中にいますか?
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