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クローゼットの前に背を向けて立つと、その扉が開いて自動的にシャツとスーツを着せられ、ネクタイまで器用に締めてくれる。
そのどれもが生あたたかいのは、僕が望んで導入した機能ではなく、スリッパをあたためる「藤吉郎」システムに抱きあわせでついてきた機能であるから仕方ない。これを解除すると、「藤吉郎」自体がこの家からいなくなってしまう。
と、ここまで準備したあたりで、僕は突然会社に行きたくなくなる。すると何もしなくても、その気分を察知したスマホが自動的に会社の上司のメールアドレスへ、欠勤の言い訳メールをでっちあげていち早く送信してくれている。
それから数分もしないうちに、上司から繰り返し着信がある。何度か無視した末におそるおそる出てみると、上司からいきなりクビを宣告される。いったい僕のスマホは、どんな無茶な欠勤の言い訳を送信したのだろう?
とはいえ上司からの電話も自動……というか上司が機械なので、これ以上の詮索は無意味なのだけれど。
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