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前書き
「引きこもり」という言葉があります。
仕事や学校に行けず家に籠り、家族以外とほとんど交流がない人のことを指すらしいです。
今の僕の状況も、それに近いと思います。
ここで一つ、自己紹介をしておこう。
僕の名前は、桐島敬キリシマケイ。
年は17歳、学校に通っていれば高校2年生だ。
現在僕は、明かりひとつないリビングのソファーで、最高のひと時を送っている。
閉め切ったカーテンの奥からはいい天気の中、この素晴らしい世界を思う存分満喫している小鳥たちの鳴き声がしていて、隙間から入る陽光はこの薄暗い部屋を照らしてくれている。
他人から見れば今の僕の姿は、まるで電気会社に明かりを止められた、昼間なのに外に出ず部屋でゴロゴロする『クズ』にしか見えないんだろうな。
————でも、それは違うんです。
どうか言い訳させて下さい。
まず言い訳一つ目。
僕は、ワザと部屋を暗くし、ソファーでゴロゴロしているんだ。
何故ならヤツらは光と、そして音に反応する。
だからテレビも部屋の電気もつけていないし、念の為に窓とカーテンを閉め切っているんです。
決してお金が払えなくて電気会社に止めれてしまったとか、そんなんじゃないよ。
そして言い訳2つ目。
僕はソファーで『ゴロゴロ』しているんじゃない。
余計な空腹を抑える為、極力動かないようにしているんだ。
クマとかも冬になると冬眠するでしょ?
アレです、アレ。
あれと同じ原理というわけなんです。
……じゃあ、ここで当然の疑問が生まれる。
僕はどうしてこんな事をしているのか。
理由は簡単。
この滅びてしまった残酷な世界で生き延びる為。
その他に理由なんてあるわけがない。
そうそう、言い忘れていたけど…………。
この物語は決して、サバイバルホラーじゃない。
だから怖がりの人は安心して見てくれて大丈夫。
この物語は、
僕が妹に『普通の大学生として今日も生きている』と思わせる為に日々を奮闘する、ハートフルコメディなのです。
異論は絶対に認めません。
それじゃ、物語は始まります。
楽しんで行って下さい!
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