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それはある日、突然に
「瑞希!!!」
事故に遭ったという恋人の病室はすごく静かだったけれど、僕は最初、その意味に気付けなかった。
息が苦しいけど、そんなの気にならなかった。早く会いたい、ひと目顔を見せたい、目覚めるまで傍に……! そう思えば、走り通しになるなんてなんでもないことなんだ。
だけど、迎えてくれたのは顔に白い布を被せられた最愛の恋人の姿で。
「そんな……」
まるで何かのフィクションみたいに、ガク、と膝から力が抜けた。だって、つい昨夜も一緒に過ごしてたのに……、軽口を叩き合って、酒を飲んで、まるで友達みたいに気安い間柄をつくづくありがたく思って。
そんな日々が、ずっと続くと思っていた。いや、思うことすらしないほど、当たり前のものになっていた。
『そんな変態さんだと、おあずけが必要だよね』
『祐司くらいの変態だと、私がいなきゃ誰も相手してくれないからね』
拗ねたような声音と、露骨にそっぽを向いて見せる顔がたまらなく愛おしかった。会心の出来だというイラストを真っ先に見せてくれるときの笑顔が眩しかった。何も言わないときに撫でた髪が柔らかくて、普段しっかりしていても困ったときにはちゃんと頼ってくれるところが嬉しくて、たまに真面目な話をするときの真剣な目に強く惹かれていた。
ねぇ、瑞希。
僕はこれからどうしたらいいんだろう?
君が言っていたように、僕は、君がいなきゃ本当に駄目なやつなんだ、本当だよ?
「瑞希、なぁ……、瑞希……?」
呼んでも答えなんて返ってこない。
こうして、僕と最愛の人と永遠の別れは、あまりにも突然訪れることになった。
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