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「だけど、鍵は開いていた…」
「それは…そうらしいですけど、でも私はちゃんと閉めました!ウッチー…堀内ちゃんにも確認して貰いました!」
確かに、それは佐保も知っている。堀内が言うには、戸は開かなかった。
…しかし、戸が開かないことと鍵がかかっていないことは決して矛盾する訳ではない。
「…井上、俺の話を聞いてもらっていいか?これから話すことは俺の憶測なんだが」
井上は何も言わない。不安そうに何もない机の上を見ていた。
「…部室に折れたホウキがあったよな?」
「…いえ、わかりません。あるんですか?」
嘘か真か、井上は知らないらしい。
「あぁ…。もしも、もしもだがそれを使えば鍵をかけたフリができると思わないか?」
再び沈黙する井上。
「部室の戸は二枚組みの引き戸…。引き戸は基本的に右側の戸を開けて出入りするから、そこを固定できさえすれば鍵がかかっている風に見せかけられる」
「でも、そんなのすぐにバレます」
「普通ならな。でもウチの部室の前にはロッカーが置かれている。それも、左側の戸の下半分を隠すように」
佐保が自分なりの推理を展開していく。
「そこにつっかえ棒として折れたホウキをはめれば、見かけ上鍵がかかる。そして、それを行なった犯人は後に一人で部室に行き、金を盗って出て行った。その時は鍵を借りれず、部室に鍵をかけられなかった…」
井上は何も言わず、机を見ている。
「…これが出来るのは、お前しか居ないと思うんだが」
「なんでですか?」
久々に口を開いた井上の言葉には、微かに苛立ちが混ざっていた。
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