発端

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発端

「お金が無い!」 帰宅ムードに包まれた女子バスケ部室に、満島愛理の声が響き渡った。 満島はリュックの中を引っ掻き回している。 「どうした?」 騒然とする室内をかき分け、部長の津川咲が歩み寄る。 「先輩…お金無くなっちゃいました」 「本当に?」 尋ねる津川に、満島は空っぽになった財布を見せつけた。 「いつまであったか覚えてる?」 「部活始まる前には絶対ありました。四千円…」 沈んだ表情のまま満島が答える。 「…先生呼んでくるから、それまでに皆着替えておくように!」 津川はそう言って部室を後にした。 数分後、話を聞いた佐保正人が現場に駆けつけた。そこからは佐保と津川、満島らにより部員全員の持ち物検査が行われた。 しかし、今回盗まれたのは現金のみ。財布ごとならば財布の発見で犯人がわかるが、現金は本人のものか満島のものかわからない。 結局、全員の持ち物検査が終了したものの、誰かのポケットから四千円が転がり出ることはなかった。
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