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犯人探し
「う〜〜〜ん」
佐保は頭を抱えていた。原因は勿論、先日起きた部内での盗難である。
部の為にも学校の為にも、なにより満島の為にも犯人探しは行わなくてはならないが、部に探りを入れるのはどうやっても部内の雰囲気が悪くなる。
なんなら犯人探しをする自分も嫌われかねない。
この学校に赴任してきて一年目の佐保には、大分荷が重かった。
コンコン、と資料室のドアがノックされる。
「失礼します」
「あぁ、どうぞ」
佐保がそう返すと、ドアの向こうから津川が現れた。
「悪いな、呼び出しちゃって」
「いえ、平気です」
津川はそう言うと、手を後ろに組んだままその場に佇んでいる。
「あー、座っていいぞ」
「失礼します」
佐保に促されてから、津川は静かに席に着いた。随分真面目な子だな、と佐保は思った。
「さっきも言ったけど、急に呼び出してすまない。もしかしたら他の部員にあらぬこと言われるかもしれないが、気にしないでくれ」
「大丈夫です。私は部長ですから、こう言う時に矢面に立たなくては。それに…」
そこで津川はキリッとした目で佐保を見て行言った。
「私はやってませんから」
その眼差しに、佐保は蛇を重ねた。
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