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「部室に鍵はかけてたのか?」
「はい、勿論。女子部活ということもあり、普段から鍵の施錠には気をつけています。あの日も例外ではありません」
そう話す津川の顔には一点の曇りもない。
「ん〜、そうかぁ…」
女子バスケ部に限らず、部室を開ける時はまず体育教官室で部室の鍵を借りる。
その後の鍵の扱いは部によって様々だが、女子バスケ部の場合はマネージャーが鍵を部活終了まで保持することにしていた。部活中、部室に用があった時いちいち教官室まで赴くのは面倒だろうという考えの元である。
しかし、それも今回の一件で改定せざるを得なくなった。
「あくまで可能性の話だが…マネージャーが盗ったってことは無いのか?」
佐保は尋ねた。鍵を持っていた張本人だ、疑わないわけにはいかない。
「確かに鍵の管理をしていたのはマネージャーですが、そもそも彼女には部活での仕事があります。基本的に練習場を離れません。何か用事で外に出ることがあれば、私に鍵を渡すように言ってあります」
なるほど、鍵の管理はバッチリなようだ。
「だがそうなってくると、結構犯人は絞られるんじゃないか?部活中に鍵を使った部員…」
「はい。あの日の部活中、部室の鍵をマネージャーに借りに行ったのはこの三人です」
言いながら、津川は小さなメモを差し出した。そこには
岩野 留美
井上 千夏
堀内 叶絵
と書かれていた。
「もっと正確に書くなら…」
と言って、彼女はメモに
津川 咲
と書き足した。
真面目が過ぎるな、と佐保は思った。
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