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「岩野が5時過ぎ頃の休憩で、部室にタオルを忘れたことに気が付き、マネージャーに鍵を借りに行きました。しかし、鍵は井上と堀内が借りていたため、そのまま部室に向かったそうです」
「じゃあ、そこで井上と堀内に会った?」
津川がはい、と言って頷く。
「詳細な会話の内容などはわかりませんが、それぞれに尋ねたところ、誰かが満島のリュックを漁っていた様子は無かったそうです。…まぁ、先程先生が仰ったように井上と堀内が共犯で、岩野が来る前にお金を盗んだかもしれませんが」
佐保はその言葉にどこかトゲを感じたが、それが彼女が意図したものかわからず何とも言えなかった。
「まぁ…あくまで可能性な、可能性。それから堀内たちはどうしたんだって?」
「それから10分もしない程度で皆の支度が終わり、三人とも練習場に戻ってきました。勿論鍵を持って」
「その時鍵をかけたのは誰かわかるか?」
「井上だそうです。本人も認めていますし、岩野と堀内も、井上が鍵をかけたのを見ています」
なるほど…三人が口裏を合わせていなければ、その時鍵をかけたのは井上で間違いない。
「それ以降鍵を借りたものは居ない筈なんですが…一つ妙なことがありまして」
「ん、なんだ?」
津川は唇を人差し指の側面で擦りながら言った。
「…部活終わりに部室を開けようとした時、すでに鍵が開いていたんです」
「鍵が…開いていた?」
予想外の展開に動揺する佐保。
「だから、井上たちに鍵を掛け忘れたのかと尋ねたのですが、さっき言った通り井上が鍵をかけるのを全員が見ていて…。なんなら堀内も最終確認をしたらしく」
津川が言うに井上はひどい心配性で、鍵をかける際はその場にいる他の人にも最終確認をさせるらしい。そのため、今回も堀内が施錠できているかを再度確認させられたそうだ。
「その時には鍵がかかっていた筈なんですが…」
「う〜ん…ますますわからなくなってきたな」
佐保の思考は暗礁に乗り上げた。
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