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現場検証
佐保と津川は部室の前に移動していた。二人の前には塗料のはげた二枚の引き戸があり、左側の戸の前には腰ほどの高さのロッカーがある。
佐保は戸に近づくと、鍵をかけたり開けたりしてみた。
「…鍵が悪いってことはなさそうだ」
佐保がもう一度鍵を回すと女子バスケ部室の戸がガラガラと音を立てて開いた。
「中は思ったより狭いんだな」
「以外と使えるものですよ。大所帯の部活は知りませんが」
部室の広さは六畳くらいか?そこに扉のない棚が置かれているため、なかなか圧迫感を感じる。まぁ私立ならともかく、県立ならこんなものか、と佐保は思った。
部室は入り口から見て正面と右の壁に天井までの棚、左側は打ちっぱなしの壁にベンチが寄り添っている。そのベンチの横に掃除用具が金属製のカゴに纏められていた。床にはすのこが敷かれている。
「…見た感じ、隠れられそうなところは無いか」
「ええ、無理だと思います」
佐保は念のため棚を全て確認するが、奥行きはあっても幅がない。人が入るのは無理だ。
室内に誰かが隠れて、満島の金を盗んだことはなさそうだ。
すのこもめくって見たが異常無し。続けて掃除用具を調べてみると、ホウキが真っ二つに折れていた。
「おい、ホウキ折れてるじゃないか」
「あ…すみません」
「以前から折れてたのか?」
佐保は真面目な津川にしては珍しいなと思った。こういうことは一番に報告しそうだが。
「…はい、前からです。折れた時に報告すべきでした」
「そうか…なんだ、その、気をつけるように」
急に津川がしおらしくなり、なんだか佐保も調子が狂ってしまった。…一旦出よう。
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