現場検証

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佐保はもう一度戸を見渡した。だがしかし、人が出入りできるような隙間はない。 やはり誰かが鍵をどうにか盗み出し、部室に入ったのか? だが、それなら部室が部活終了時に開いていた意味がわからない。 井上が鍵をかけ忘れたのか?でも証人がいるし…。 そこで佐保はふと、左側の戸の前にあるロッカーが気になった。 「まさか…!」 微かな閃きに突き動かされた佐保は、それをズズズッと動かす。…が、そこには特に何もなかった。 「穴でもあると思われたんですか?」 津川に図星を突かれ、佐保は小さく唸った。 「このロッカーは何のためにあるんだ?」 女子バスケ部は基本的に屋内練習ばかりだし、走り練があっても靴を外に置くことはない筈だ。 「これは以前この部室を使っていたボクシング部の名残ですね。いつか片付けなくてはなりません」 「入り口にあると邪魔だよなぁ…まぁ引き戸なら右側しか開けることはないけど…」 佐保は自分の言ったその言葉に、少し引っかかった。引き戸は右側しか開けない…まさか。 佐保は再び部室に入る。そして折れたホウキを手に取り、じっくりと眺めた。 「先生、どうしたんですか?」 「…なるほどな」 佐保は一言、ボソリとそう言った。
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