3人が本棚に入れています
本棚に追加
佐保はもう一度戸を見渡した。だがしかし、人が出入りできるような隙間はない。
やはり誰かが鍵をどうにか盗み出し、部室に入ったのか?
だが、それなら部室が部活終了時に開いていた意味がわからない。
井上が鍵をかけ忘れたのか?でも証人がいるし…。
そこで佐保はふと、左側の戸の前にあるロッカーが気になった。
「まさか…!」
微かな閃きに突き動かされた佐保は、それをズズズッと動かす。…が、そこには特に何もなかった。
「穴でもあると思われたんですか?」
津川に図星を突かれ、佐保は小さく唸った。
「このロッカーは何のためにあるんだ?」
女子バスケ部は基本的に屋内練習ばかりだし、走り練があっても靴を外に置くことはない筈だ。
「これは以前この部室を使っていたボクシング部の名残ですね。いつか片付けなくてはなりません」
「入り口にあると邪魔だよなぁ…まぁ引き戸なら右側しか開けることはないけど…」
佐保は自分の言ったその言葉に、少し引っかかった。引き戸は右側しか開けない…まさか。
佐保は再び部室に入る。そして折れたホウキを手に取り、じっくりと眺めた。
「先生、どうしたんですか?」
「…なるほどな」
佐保は一言、ボソリとそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!