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「お待たせ致しました。それでは、お部屋まで私がご案内させて頂きます」
迷惑を掛けた客とはいえ、一般客の案内を総支配人がするというのに驚くが、これ以上余計な問答はしたい気にもならず黙って頷いた。
玲慧から俺のスーツケースを受け取った総支配人と共にエレベーターに乗り、最上階へと移動する。
部屋の前に到着し、カードキーを使用した総支配人によって扉が開かれる。すると、想像以上の壮麗な部屋に息を呑んだ。
大きな液晶テレビや数人が座っても悠々と寝そべることが可能な柔らかそうな広いソファーベットのあるリビングルームに、多くの料理が並ぶことが可能な長方形の木製のテーブルがあるダイニングルームの奥にはキッチンまで完備されている。
一般家庭では中々拝むことのできない豪華な内装だが、それでも漠然としたホテルのイメージを良い意味で裏切るのは十分で、まるで一戸建てのようだ。
「それでは、お荷物はこちらに失礼致します。ごゆるりとお寛ぎ下さいませ」
俺が驚いている内に玲慧と会話していた様子の総支配人が恭しく頭を下げ、部屋を出ていく。
「はい、この部屋のカードキーだって」
「あ、ああ……ありがとう」
事実なのだが、あんぐりと口を開け呆然と立ち尽くすという庶民丸出しの反応をしてしまった事を若干気まずく目を合わせないまま、お礼を言って受け取る。
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