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対してこの部屋のような豪華な内装を見ても玲慧に全く驚いた様子がないのは、同じくスイートルームに宿泊しているからなのだろうが、本当に何故遊び相手に俺を選んだのかという不信感が滲む。
こんな豪華なスイートルームに宿泊可能という事は、ビーチで言っていたお金には困っていないというのは事実だろう。俺と同い年くらいに見えるのに、中身ね差は明確だ。
……どうせ俺はしがない会社員だよ。下請けの子会社だが、急な有給休暇の申請でも受理してくれるようなホワイトだから幾分かマシだろうが。それに、幸いあの野郎とは……会社が別だった。
「そんな顔をするなら俺の事だけを考えてよ」
掛け声にはっとすれば、視界いっぱいに広がっていた端正な顔に驚いて後ずさる。だが柔らかい絨毯に足が躓き身体が傾く。
そのまま床にーーそう思った次の瞬間には、素早く玲慧に手を掴まれ引き寄せられていた。鼻孔を満たすような濃密な甘い香りがした。ぎゅっと抱きしめられると香りが強くなる。
「危なかったね」
「あ、ありがとう……」
咄嗟にお礼を言うが、すぐにはたと気づく。そもそも原因となったのは玲慧なのだから助けてくれるのは当然ではないかと疑問が浮かんだ。
助けてくれたのは事実な為にわざわざ取り下げるつもりはないが、ジロリと睨めば、玲慧は白々しくもにこりと笑う。
「ねえ、俺と遊ぶ気はない?」
今更ではないかと眉を顰める。最初から玲慧はそれが目的で俺を選んだ筈だ。
「ただの友達とかじゃなくて、もっと深い関係にならない?勿論、ここにいる間限定でいいから」
「は……?意味わかって言ってんのか?」
玲慧の言葉の意図が理解できない子供ではない。だが、玲慧程に容姿が完ぺきな男に相手にされる程に自分の容姿が秀でていると思えるお気楽な脳内もしていなかった。
からかっているのかと胡乱な目を向けるが、玲慧は言葉を撤回するどころか悠然と「わかってるよ」と頷いてきた。
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