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「さっきは……悪かった」
逸らしそうになる目線を合わせたまま告げれば、玲慧は一瞬だけ驚いた顔をする。だがすぐに笑って気にしてないと快く許してくれる。
「俺もごめんね。斯乃が他の男の事考えてるの嫌だったから、つい」
玲慧の言葉はどこまでが本気がどうかわからない。だが、他の人間の事で一緒にいる相手が不機嫌になったりするのはあまり面白くない事は理解できる。
深い関係になろうと言った玲慧の言葉が脳裏を過る。すると、鼓動が速くなり、緊張に体が強張った気がした。
「お前が言っていた事なんだが……俺と遊んでくれるか?お前が言った深い、関係で。忘れたいんだ」
最後に呟いた言葉に苦い気持ちが胸に滲む。
「勿論だよ、斯乃。俺と遊んで。触れてもいい?」
全てを察しているように深くは追及してこない玲慧に複雑ながらも内心で感謝をしながら、覚悟を決めてああとはっきりと頷いた。
合わせたままの視線に絡めとられそうになりながら、逸らしたい衝動を堪える。近づいてくる手に緊張が強くなっていく気がした。
「斯乃」
頬に触れた手の感触に息を詰める。甘い声音で名前を呼ばれると、まるで酒でも煽ったかのように身体の熱が上がっていく。
空いた方の手が繋がれ握られると、手の感触と温もりをはっきりと感じた。
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