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「決めた」
ぱたりとメニューを閉じる。自分の財布だとしたら胃が痛くなるような金額だが、自分の金ではない。一番高い料理にする事にした。
「お前はどうするんだ?」
玲慧はメニューにすら目を通していない。食事をしないつもりはないだろう為、見なくても分かるという事だろうか。
「斯乃と同じのでいいよ」
「分かった。あと、俺持ちでいい」
躊躇はせずに即答した。料理は当然二人で相当な値段の食事だが、気に掛けない。すぐにウェイターを呼び寄せ、注文を終える。
ふと横に首を動かせば、ここに来るまでにいたビーチが見えた。変わらず穏やかなビーチには寒い中でも、互いで温めるように連れ添って歩く男女の姿がある。
遠目からでも仲睦まじい姿に向ける視線ではなくなっていくのを感じて、目を逸らした。
「なあ、なんで一人で旅行に来たんだ?お前なら相手ぐらいいそうだけど」
考えないように玲慧に集中しようと話題を振る。だが、純粋に疑問だった。
玲慧は誰かと過ごす時間が煩わしく思う人間には到底思えない。そもそもそんな人間だったら俺に声を掛けないだろう。
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