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壁から離れた位置で見れば、盆栽と並ぶ様に一望できる湾の光景は素晴らしく、普段情緒等特に興味がない俺でも凄いと思った。
「綺麗だよね。ここ好きなんだ。落ち着いてて、ビーチから見る海も好きだけどここから見る海もすごく素敵だから」
「確かに綺麗だな」
心から同意して呟けば、玲慧が満足気に微笑む。気恥ずかしくはなったが、それでもやはり目の前の光景は素晴らしいものだ。
その後も清楚な花と木々に囲まれてひっそりと建つ煉瓦の門が印象的なガーデンや、見事な薔薇によるアーチがあるガーデンなどがあり、どれも満足の出来る光景だった。
気が付けばあっという間に庭園を回り終わり、最初に見たお洒落な外観の、ショップとレストランを兼ね備えた建物の四階にある、多種多様なハーブの販売と提供を兼ねたカフェに来ていた。
散策中は気にならなかったが、一時間近く楽しんでいた事もあり、喉も乾いて帰る前にお茶をしようという事になったのだ。
「……美味しい」
「ハーブティーって聞くと女性の飲み物といった考えや苦さがイメージされがちだけど、男にも飲みやすくて美味しいんだよ。身体にもいいし、気に入ったみたいで良かった」
玲慧の言ったハーブティーに対する俺のイメージはそのままで、だが予想を裏切ったすっきりとした飲み口とほんのりと香る花の匂いは不快感なく、優しく喉を潤してくれる。
「連れて来てもらって良かった。俺一人だったら、ガーデンって聞いただけで来なかっただろうから。ありがと」
「良かった」
そう言ってソーサーにあるカップを手に取り優雅に口元に運ぶ様は絵になっており、玲慧の穏やかな雰囲気に合っていた。素直に綺麗だと思った。
周囲から感じる熱のある視線は確認するまでもなく玲慧に向けられている。
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