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「お金、たくさん使いたいなら一人より二人の方がいいよ」
一理あるが、お金には困っていないんじゃなかったのかと、思わず突っ込みたくなる。
それに、断られるとは思っていなさそうな男の態度が素直に同意するには少し引っかかる。いや、断っても勝手について来そうだ。
誰かと過ごしたい気分ではなく断ろうかと考えるが、だがふと、一人で金を使うよりも男を利用する方が報復に繋がるのではないだろうかと考えを改める。
俺を捨てたあの野郎も、俺がすぐに他の男を見つけて、そいつと過ごす為に金を使うとは思っていないだろう。
「アンタの事利用するだけだけどそれでいいの?」
冷静になった時に自己嫌悪したり、良心が痛むことがないように、後腐れなくするには最初から単刀直入に確認する方が早い。
すると、男はまたも躊躇いなく即座に頷いた。
「俺の事好きにしていいよ。その代わり遊んでね」
「……暇し過ぎじゃないのか。まあ、いいや。最初は食事だっけ?アンタ……いや、玲慧が言うようにまだチェックインしてないからそれからになるけど」
玲慧からの誘いで了承済みとはいえ、俺の事情に利用する事にしておいて名前で呼ばないのは流石に良くないと思い呼び直す。
移動する為に立ち上がって手やズボンについた砂を、玲慧に掛からないように気を付けながらバサバサと払う。同じく玲慧も立ち上がって軽く払っていた。
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