1.始まり………

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1.始まり………

『世界の全てが終わればいい―――――』 …………いつも、そう思っていた。 俺を嘲笑い、部屋から出られなくさせた外界の人間どもなど、皆、糞だ。虫ケラだ。 だから、この俺と一緒に世界の全てが滅んじまえば、いい―――――。 独り、閉ざされた部屋の中で、いつも馬鹿みたいにそればかりを願っていた。 台風接近中でもないのに、光を中に入れないよう閉ざされたままの分厚い雨戸は、さながら 個人シェルターのシャッターのようだ。 …………俺は、一体、何から身を守っているのだろう…………? そうだ………『人間(ひと)』だ…………。 無神経に……… その不躾な言葉で……、視線で………… 繊細な俺の心を抉りに来る『敵共』だ。 アイツらさえ、この世の中から居なくなれば、俺はきっと、もっと『自由』になれる――――――。 何だって良い………… この棺桶だか、シェルターだか解らない、 この部屋から………… 俺を自由にしてくれるものなら、何だって―――――。 「誰か核爆弾でも投下して………、 世界の全てを、ぶっ壊してくんねぇかなぁ」 幼稚で不謹慎な妄想を抱きながら……… 只、退屈な日々を過ごす。 何も持たない俺にとって………、 終末思想は、いっそ救いだった。 ――――――だが、実際に が起こった時………… 世界は、俺だけを残して、 ほとんどが消え去る。 核爆弾が投下された訳ではない。 ………世界の(かたち)は、そのままに………… 只、人々だけが、 忽然と、消える――――――
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