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――――――しかし、他人の不幸を
嘲笑っていられたのは、束の間だった。
『空腹』を前に、じわじわと死の恐怖が忍び寄る――――――。
孤独なシェルターから解放されるなら、この世界なんか、どうなっても構わないと思っていたのに…………
…………いざ、そのどうにかした世界の死が間近に迫ると、どうしようもなく、この身が惜しくなる。
『喰う』か…………
『喰われる』か……………
―――今、俺に究極の選択が迫られている。
この家を出て、近場のスーパーにでも行けば、流石に保存食くらいは残っているだろう。
…………しかし、そうなると、画面を通してしか見ていなかった、あの化け物達と遭遇する事になるかもしれない。
それは、とてつもなく恐ろしい。
「『蟲』は視界から外れた標的を追って来ない」
そんな情報をあるサイトで見た事はある。
四方八方が塞がった密閉空間の中にまでは押し入って来ず、壁に隠れるだけでもヤツらの標的から逃れられる。
ヤツらの認知機能は低く、
壁があれば、そこで行き止まりだと勘違いし、その先に空間があるという考えが及ぶ程の知性も、感覚も無い――――――
それがサイトの主の主張だった。
本当かどうかは解らないが、現に引きこもり
上級者である俺は、未だにヤツらと遭遇していない。
(…………人間を宿主にしながら、知性を利用出来ないなんて………
どれだけ残念な寄生生物なんだ)
そう嘲笑っていられたのも、引きこもっている内だけで、いざ外出しなければならないとなると足元から震える。
(だって…………ガセネタかもしれないじゃないか。
………ヤツらと遭遇し…………
検証通りにいかなかったら、どうする?
何処までも、何処までも、執念深く追って来て………壁など簡単に破壊されてしまったら…………俺は、どうすればいい?
生き残れる保証なんて、何処にある?)
俺は、何度も、何度も動画で見た。
ヤツらに人間が標的にされた時…………
まるで、バーゲンセールの商品みたく、
奪い合って、バラバラにされるのを…………
例え、愚かな化け物だとしても…………
生身の俺なんかが敵わない相手だって事くらい解る。
あんな風に、壊れた人形みたいにバラバラになるリスクを俺に犯せって言うのか………?
――――出来る訳ない―――――!!!
……………俺は、何年も、この家から出てないんだ…………
なのに、そんな事、出来る訳――――………
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