2.ステルス人間

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予想通りだが、スーパーは荒らされていた。 『(ワームズ)』も、勿論、 人間による荒らしの痕跡も垣間(かいま)見る。 レジが荒らされていた。 中身の金が無くなっているのは人間によるものだろう。 『(ワームズ)』に貨幣価値を理解する能力があるとは思えない。 そもそも、此処まで崩壊した、この世界で 貨幣は意味を成し続けるのか疑問に思ったが、金があれば飛び付いてしまうのは人間の習性なのかもしれない。 空のレジよりも、俺は食品棚に向かう。 当たり前だが生鮮食品のコーナーからは肉の腐敗臭しかしておらず、近寄れたものではなかった。 缶詰類を、次々空け、たらふく食ったら 少しだけ気力が回復した。 …………今、自分がすべき事が少しだけ解る。 食料も大事だが、 今、自分が為には、他にも用意しなければならない。 カ○リーメイトをポケットにしのばせて、 ホームセンターに向かう。 途中、無人の し○むらに寄って、カーゴパンツに履き替える。 いくら人が居ないからって、アンモニア臭 漂うズボンを履き続ける気にはなれない。 それに『(ワームズ)』の嗅覚は大した事なくても、野良犬の餌食にならぬという保証は無い。 人間(ひと)の居ない、今―――― 徐々に野生動物が台頭してくるだろう。 とにかく、少しでも、を薄れさせたかった。 ようやくホームセンターに着くと、斧や鎌などを探し回った。 …………どれも、何だか心許ない。 力ある者が振り回せば、多少の威力にはなったろうが、非力な俺では、果たしてどうだろうか………? スポーツ用品店でバットを振り回してみたものの、やはり感触は同じだった。 長年の引きこもり生活で弱りきった俺の筋力では、余り、多くの武器を手にする事は出来ないだろう。 攻める事よりも、逃げる事を重視し、 必要最低限の身軽な武器で体力の減りを少しでも抑えないと………。 ………どうせ、俺が華麗に戦闘する事などないのだから―――――。 あれこれ考え………、 ふと浮かんだのは、ある人の言葉だった。 ネットで知り合った人で、エアガンの改造が 得意だと豪語していた男が居た。 (3Dプリンターで銃を作ったとか、 エアガンを改造して殺傷力を高めたとか…… (うそぶ)いていたっけ) 真偽の程は定かではないが、他の武器よりは 試してみる価値はある。 互いに引きこもりなので、直接会った事は無い。 だが、聞いていた相手の住所は、俺の自宅と、そう離れていなかった――――。 俺はバールだけを握り、その人の家へと向かう。 …………途中…………、 『(ワームズ)』に遭遇しませんように、と祈りながら―――――――。
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