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予想通りだが、スーパーは荒らされていた。
『蟲』も、勿論、
人間による荒らしの痕跡も垣間見る。
レジが荒らされていた。
中身の金が無くなっているのは人間によるものだろう。
『蟲』に貨幣価値を理解する能力があるとは思えない。
そもそも、此処まで崩壊した、この世界で
貨幣は意味を成し続けるのか疑問に思ったが、金があれば飛び付いてしまうのは人間の習性なのかもしれない。
空のレジよりも、俺は食品棚に向かう。
当たり前だが生鮮食品のコーナーからは肉の腐敗臭しかしておらず、近寄れたものではなかった。
缶詰類を、次々空け、たらふく食ったら
少しだけ気力が回復した。
…………今、自分がすべき事が少しだけ解る。
食料も大事だが、
今、自分が食料にならない為には、他にも用意しなければならない。
カ○リーメイトをポケットにしのばせて、
ホームセンターに向かう。
途中、無人の し○むらに寄って、カーゴパンツに履き替える。
いくら人が居ないからって、アンモニア臭
漂うズボンを履き続ける気にはなれない。
それに『蟲』の嗅覚は大した事なくても、野良犬の餌食にならぬという保証は無い。
人間の居ない、今――――
徐々に野生動物が台頭してくるだろう。
とにかく、少しでも、自分の痕跡を薄れさせたかった。
ようやくホームセンターに着くと、斧や鎌などを探し回った。
…………どれも、何だか心許ない。
力ある者が振り回せば、多少の威力にはなったろうが、非力な俺では、果たしてどうだろうか………?
スポーツ用品店でバットを振り回してみたものの、やはり感触は同じだった。
長年の引きこもり生活で弱りきった俺の筋力では、余り、多くの武器を手にする事は出来ないだろう。
攻める事よりも、逃げる事を重視し、
必要最低限の身軽な武器で体力の減りを少しでも抑えないと………。
………どうせ、俺が華麗に戦闘する事などないのだから―――――。
あれこれ考え………、
ふと浮かんだのは、ある人の言葉だった。
ネットで知り合った人で、エアガンの改造が
得意だと豪語していた男が居た。
(3Dプリンターで銃を作ったとか、
エアガンを改造して殺傷力を高めたとか……
嘯いていたっけ)
真偽の程は定かではないが、他の武器よりは
試してみる価値はある。
互いに引きこもりなので、直接会った事は無い。
だが、聞いていた相手の住所は、俺の自宅と、そう離れていなかった――――。
俺はバールだけを握り、その人の家へと向かう。
…………途中…………、
『蟲』に遭遇しませんように、と祈りながら―――――――。
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