送り草

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
これは、ある地域に残るお話を信じた少年の話 僕は妹と一緒に買い物に行っていたんだ。買い物が終わって、妹と話しながら帰っていたら、車が突っ込んできた。その後からは意識を失って覚えていない。気付いたのは病院のベットの上だった。 僕は、右腕をなくしていた。右腕をなくしたことも悲しかったが、それよりも悲しい事があった。妹が死んだことだ。病院を退院する時に聞かされた。 僕が代わりに死ねばよかったんだ。右腕だけなくして生き残るなんて… 僕は妹が死んだことで、精神がやられて学校に行けなくなった。 何もせずに、部屋にこもっていた。大好きな野球も 何もかも嫌になった。 そんな生活をしている中、僕が住んでいる地域の昔話を思い出した。                  送り草    それはある川のほとりに生えている草 生きる者の魂をあの世に送る草    その草で船を作り、川に流すと、送り人が現れ、魂を船に乗せるという    その魂が行き着く場所には、その魂の持ち主の大切な人がいるという    その草は、大切な人に会いたい人の前に現れる 僕はそんな草があるわけないと思っていたけど、無心になって川と送り草を探した。 その川はすぐに見つかった。家の裏側に小さい小川が流れていた。その川じゃないかもしれない。でも、その川だってわかったんだ。なぜかわかった。そして、送り草を探した。 どのぐらいたったのだろうか 送り草らしきものは見つからない。 諦めかけていた時、一か所だけ草が生えていないところがあった というより、一本だけ生えていた。 僕は、その草こそが送り草だと思い、引き抜き、家に持って帰った。 家に持って帰った後、家にあった瓶に水を入れ、送り草を入れた。そして、船の作り方を調べた。 笹船のような作り方だった。僕は無心で船を作った。 気付いたら朝だった。寝てたみたいだ。 僕は、小川に船を持っていき、小川に流した。 何も起きない。やっぱり昔話だからそんなこと起きるわけない。 そう思っていると、 「久しい 送りはいつ振りだろうか…」 男の人の声だった。僕は頭を上げ、声のする方を見た。 そこには、着物を着て、わらで作った帽子(江戸時代とかに日本人が被ってるようなもの)をかぶっていた。 僕は 「あなたが送り人ですか?もしそうなら、僕を連れていってください。」 と言った。男はさびしそうな声で、 「送りはあの世に行く。二度とこちらの世界には戻れないぞ。それでも良いか?」 と言った。 「妹が待ってるんです。連れていってください。お願いします。」 僕がそう返事すると、船が、僕と送り人が乗れるぐらい大きくなった。 僕は船に乗った。船に乗ると、送り人が漕ぎ出した。 ゆらりゆらりと揺られて、どのくらいたっただろうか。まだ陸につかない。 すると、送り人が話しかけてきた。 「汝、歳は」 「十三です」 「十三…十に三つか」 会話はそれっきりなかった。 しばらくして、陸が見え、たくさんの人影があった。 ここからでは妹の姿は見えない。その時、 「戻れ!」「来ちゃだめだ!」「来ちゃダメ!」 たくさん声が聞こえてきた。 「あの陸にいる者の声だ。例外はいるが、ほとんどはこう叫んでいる。」 送り人が船をこぎながら話した。 人々の顔が見えるぐらいの距離まで近づいた。他の船も見えてきた。 すると 「なんで来たの!来ちゃだめだよ!戻って!」 聞き覚えのある声だ。妹だ 一つ下の妹の声だ。 「妹だ。僕の妹だ!送り人さん急いでくだ」 「いいんだな?」 送り人は僕の言葉を遮るように言ってきた。 「本当にいいんだな?」 そう聞かれ、僕はすぐ答えた。 「僕はこの船に乗るときに覚悟を決めてきた!」 そう言い放った。 「じゃあ行って来い」 気付いたら陸についていた。僕の目の前には死んだ妹がいた。 「なんで来たの…」 妹が涙を流しながら言った 「一人でなんて行かせない。だってお兄ちゃんだもん。」 僕はそう言い、妹の手を取った 「送り人さんありがとう!」 ぼくはそう言い、妹と歩き始めた。 「お父さんとお母さん待たないとね」 「心肺停止しました!」「戻りません!」 「残念ながら…」 終わり
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!