朝も昼も夕方もワンコ

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「あの飯田さんって眞子先輩の“ただの”クラスメイトですよね?」 バスの座席に座った途端に口を開いたと思ったら 涼太は難しい顔をしていて 「・・・うん」 返事はしてみたものの 涼太の表情が気になる 涼太も私も鞄を膝の上に置いているのに 何故か私の右手は涼太と繋がれたまま 車内が混雑している所為で 立っている生徒からそれは見えているようで ヒソヒソと声が聞こえてくる 「ラブラブ」 「手、繋いでる」 「見せつけちゃって」 「あれって五組の古崎君だよね?」 「相手って年上じゃない?」 それは好意的なものばかりではなさそうで 途中で聞き耳を塞いだ 「眞子先輩、この後用事ありますか?」 「・・・」 「眞子先輩?」 「・・・ん?・・・?」 「この後用事ありますか?」 「あ、んーっと、買い物に行くかな」 「それ、俺も一緒に行っても良いですか?」 「あ・・・うん?」 なんで買い物にまでついて来るんだろう その理由は聞けないまま 駅前でバスを降りた後 ミニスーパーで晩御飯の買い物をした カートのないミニスーパーの中でも 涼太はずっとカゴを持ってくれて 大きくなったなぁって なんだか嬉しくなった レジを済ませてエコバッグに商品を入れるのも手伝ってくれた涼太は そのままエコバッグを肩にかけた 「雨、降り出しそうですね」 スーパーから出た途端空を見上げた涼太に釣られて空を見上げる 「ほんとだ」 「少し急ぎましょう」 そう言って歩き始めたところで 大粒の雨が降り出した 「眞子先輩、走りましょう」 荷物も多いのに やっぱり手を繋いだ涼太の手は離れなくて 私の歩幅に合わせた所為で 二百メートルほどの距離なのに マンションに着いた時には 二人共ビショ濡れになってしまった
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