プロローグ

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知夏の言いたいことは理解できるけれど 私としては、実はそこまでして無理に彼氏を作らなくても良いと思っているのだ 「付き合ってみて、違うと思えば 別れたら済む話しでしょ?」 「でも・・・そんなの嫌なの」 沢山と付き合って経験値を増やしていけば良いと知夏は言うけれど 気持ちってそんな簡単なものなのかな? 未だに誰かを[好き]になったことがない私には ハードルが高すぎて無理 それに 外見じゃなくて私自身を好きになって欲しいし 付き合う時は私も相手を好きじゃないと嫌なのだ 「あ〜、そんなこと言ってると せっかく可愛いのに実は・・・って 変な噂が立って、挙句、一生独身だね」 実は・・・ってなんだろう 聞くのが怖いワードを飛ばして 「可愛くなんてないし いつかは彼氏もできるから 知夏は大袈裟なんだよ〜 さ、歌お〜〜〜」 戯けながら誤魔化してこの話から抜け出すと リモコンとマイクをテーブルの上に並べた 「眞子、上手いこと逃げたわね」 ニヤリと笑った知夏は 諦めたようにマイクを握った 「お〜怖」 小さく出した声は スピーカーから流れる音楽に上手く消された 家族より長い時間一緒に居る知夏は 私とは正反対で今まで付き合った彼氏の数なんて 私の両手を貸してあげても足りない コンビニ感覚の付き合いに 羨ましさなんて感じなくて いつかは相思相愛の彼氏ができる そんなボンヤリとした思いの私を 混乱させる台風の目が近づいていることに気付くまで あと少し
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