先生の想い

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2日経ち、3日経ち、海人からは連絡がないまま時は過ぎていった。私からも連絡しなかった。何度もスマホを手に取ったが、やはり出来ずにいた。 教習をキャンセルし続けるのも、なんだかおかしな気がして、教習所に行ってみることにした。 代わりの教官は60近い男性の先生だった。 いつもどおりの手順を踏んで、路上教習へ出た。 「もうハンコひとつで卒業検定なんだね。じゃあ、検定のコースを走ろうかね」 私は教官の誘導で走り続けた。 「じゃあ、そこを左折して、その先で駐車してね」 今までも検定のコースを走って、駐車する練習はしていたが、ここに駐車するのは初めてだった。 道を左折すると、ひどく暗い道だった。言われたとおりに左に寄せて駐車した。 「まあ、ここまではまあまあかな。ちょっと全体的にゆっくりすぎるかな。もう少し、アクセルをぐっと踏み込まないと」 そう言いながら、教官は私の太ももを上からぐいっと押した。 「きゃっ」 狭い座席の中で、私は出来るだけ身を引いた。 「なんだよ、女子高生じゃあるまいし」 教官はいやらしい目つきで私を見ながら私の太ももをさすり続けた。 高校生のころ、満員電車で痴漢にあったことを思い出した。怖くて犯人の顔を見られなかった。体が動かなくなって、声も出なかった。ただ怖くて、降りる駅まで黙って我慢した。 「ハンコあと1つ、押してあげてもいいんだけどな」 そう言いながら、手は段々と上へと上がってきた。 怖い、動けない 助けて、誰か 助けて、海人くん 心の中で叫んだ。 そのとき、運転席の窓ガラスがどんどんと叩かれた。 「鍵あけろっ」 海人の声を聞いた途端、体が動けるようになった。 私はロックを開けて、シートベルトを外した。 海人が外からドアを開け、私を引っ張り出した。 「なんだよ、俺は別に何も……」 教官はへらへら笑っていた。 「彼女は俺の生徒だ。今度こんなことがあったら、校長に知らせるからな」 海人は車のドアを叩きつけるように閉めた。 そして、私を引っ張って、海人の車の助手席に乗せた。 海人は車を発進させた。
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