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海人の母親の納骨の日、私も一緒に行った。
お骨をお墓に納めて、お経を読んでもらった。
そして、2人で線香を立て、お花を生けて、手を合わせた。
「海人くんのお母さんに会いたかったな」
「そっか。でも、直接は会えなかったけど、この人が俺の好きな人だって言って、写真見せたから」
「私の写真なんて持ってたっけ?」
すると、海人はスマホを取り出して見せてくれた。
花火の夜に斜め後ろから撮られた写真だった。
「あのとき、花火じゃなくて、私の写真を撮ったの?」
「うん。あんまり綺麗だからって言ったでしょ」
「花火のことかと……」
「花火よりも君の方が何万倍も綺麗だよ」
海人はおどけて言った。
「馬鹿ね」
私は顔が赤くなっていくのを隠すように後ろを向いた。
後ろから彼の腕が伸びてきて、私を抱きしめた。
「ねえ、キスしてもいい?」
私はどきどきして、手を振り解いた。
「だめ、お母さんの前でしょ」
「じゃあ、違うところならいい?」
私は少し考えて答えた。
「まだ、だめ」
「なんで?」
「だって、先生と生徒だもの」
「えーっ」
ふてくされる海人が可愛くて、しばらくはお預けにしておこうと思った。
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