僕の妻

1/1
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
 俺たちの出会いはとあるSNS出会い専門サイトだ。特にはずかしがることでもないと思ってる。もう今じゃ誰もが利用していて当たり前といっていいものだ。  何でこんな日記を書き始めたかというと、とある日を境に俺の妻は可笑しくなったからだ。  幻覚を見始めるようになったのだ。  けれど病院には行こうとしてくれなかった。その病院こそが妻にとってはトラウマだからだ。だから俺は半年間だけ彼女の様子を見続けることにした。幻覚が見えるようになったとはいえ、それは毎日ではなく一日の数時間程度で、それ以外は日常生活に支障なくいつも通りの妻だったから。命の危険もない、生活での危険もない、ただ、俺には見えない何かが妻に見えているだけ。  それぐらいなら……俺は、構わないと思った。なにがあっても妻を愛しているし、そんな些細なことで俺の愛は消えなかった。むしろ、守ろう、守りたい、という思いが強くなった。  その愛が実ったのか。  それとも、妻が自力で我に返ったのか。  それか、()()()()()()何かしらの力が働いたのか。妻の幻覚はなくなり、俺たちに待望のものが手に入った。  そんな不思議な、だけど幸せに満ち溢れた結果を与えてくれたこの出来事を俺は日記に記そうと思う。妻には内緒の、俺だけの日記。  題名は、『僕の妻』でいいだろう。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!