出会い

2/3
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
 彼女と出会うために俺の人生はあったんだ、と思うくらい俺は人生の神様とやらに感謝した。ゆるくねじった髪を一つにまとめて背中に流した、所々カールがかかっているかのようなふわふわっとした黒髪はワックスか何かでセットしたのか何かの花の香りがしていて、耳の前から垂れている触り心地のよさそうなくるんとした髪を触りたい衝動を必死に抑えた俺を心から褒め称えたい。  肩を並べるとずっと彼女の方から花の香りがするんだけど、なんていうかそんなに濃い香りじゃなくて、鼻を優しくくすぐるような心が落ち着く香りだった。あんな香りの香水はあるわけないから、きっと彼女ならではの香りだったんだと思う。……あれだ、きっと俺は、彼女のフェロモンとやらに脳が陶酔してたんではないだろうか。そう言いたくなるほど、本当にいい香りで、道のど真ん中であろうと堂々と彼女を抱き寄せて目一杯匂いを嗅ぎたい、という衝動を抑えるのは大変だった。  ちなみに、この時彼女は俺の立ち姿が思った以上に格好良くてドキドキしていたらしい。だからまともに顔を見れなくて、俺が話しかけても目を見れなかったのは緊張していたせいだって教えてくれた。これを聞いたときは内心ガッツポーズだったね。『大人のデート特集』に載っていたコーデと髪型そのままパクって正解だった。あと自分の顔が中の上はあったことに感謝だ。写真より格好いい顔立ちで吃驚した、て言われた時は「俺をこの顔に産んでくれてありがとう!」と心から親に感謝したね。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!