出会い

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 そんな感じで、無事、いい第一印象のまま俺たちはデートを終えた。デートコースは全部『特集』にあるものを選んだが、道中で「あれ見たい」「これ食べたい」「あそこ入ってみない?」と彼女が見ていて飽きないほどキラキラ輝く目で子どもみたいに指さして言ってくるものだから、予定していたコースは映画しか行けなかった。でも、それで全然よかった。充分楽しかった。何より、彼女が本当に嬉しそうに「うふふ、楽しいね」と可愛らしい笑顔を惜しみなく見せてくれるものだから俺はそんな彼女を見ているだけで本当に幸せだった。  だから、デートを終えて別れる時。俺は中々彼女の手を離せなかった。それまでは、匂いを嗅ぎたい衝動とか、いきなりでも抱きしめたくなる衝動とか、いつの間にか耳に落ちる本数の増えた髪を指ですくって耳にかけてあげたくなる衝動とか全部全部抑えていたのに。「離れたくない」という衝動を全く抑えることが出来なかった。何より、そんな俺の衝動を増幅させるように彼女も俺の手をぎゅっと握り返して、潤んだ瞳で見上げてくるんだ。  ――そんなの、もう、抑えられないに決まってるだろう?  出会ってすぐなんて、て批判を受けるかもしれない。でも、雷に打たれたような衝撃的な恋愛っていうのは必然的にそうなってしまうこともあるんじゃなかろうか。なんせ、俺たちは20代の後半を迎えた結婚適齢期――まぁ、30間近って言った方が正しいのだろうが――いわゆる、どう動いても自分自身で責任を持てる大人だ。  だから、この時彼女と一緒に入った場所も、彼女の赤らんだ顔も、異様に熱いお互いの体温も、情熱的に交わしたキスも、全て合意の上でなら問題ない。俺たちは大人で、自分自身の決断に全て責任を持てる。SNSでの出会いとはいえ、会ってすぐ交際を決めたって、俺たちがお互いでそう求め合っていれば問題なんてどこにもないのだ。そうして俺は1日目のデートで彼女と交際を始めることを決め……あー、いや、違うな。  彼女をこの先一生大事にすると決めた。  
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