0. 進級

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0. 進級

「えー、君たちは今日からこの学校の最高学年になるわけです。しっかりと自覚して責任のある行動を取るように。わかったか?」 教室に渋い声が響き渡る。 「「はーい」」 やや元気のない声がバラバラに散った。 はぁー新学期早々こんな真面目な話すんのー。 もっとお楽しみ会とかの計画立てたいよー。 まるで、小学生みたいなことを考えていると 重たい空気を取っ払うかのように、チャイムが鳴った。 ロングホームルームの終わりの挨拶をして、お弁当の準備をする。 「しおりー! お弁当一緒に食べよー!」 明るめな声が聞こえてきた。私も負けじと元気な声で返す。 「お、あすかーいいね!そっちの席に行くねー」 あ、申し遅れました。私、佐野しおり。文系のクラスです。今日から高校三年生。いわゆるLJK。 JKブランドもあと1年。元気いっぱいがんばりまーす! 「しおり、なにやってんの?早くきなよ」 げっ、今の見られてかな。最近のマイブーム「勝手にアイドル風自己紹介」 我ながら馬鹿だなあって思う。高三にもなってこんな事やってるなんて、きっとろくな大人になれやしない。がっくり。 そして、向こうでずっと私の名前を呼んでいる彼女は、篠原明日香。 私と違ってしっかり者。 きっと彼女みたいな人が、いい大人になるんだろう。 彼女の夢は起業家になる事。私も雇ってもらって、楽な仕事でいいお給料貰っちゃおー。なんちゃって。 「そういえば、しおり進路どーすんの?」 この子エスパーか!?私がお茶でむせていると明日香が不思議そうな顔をしている。 「え、ど、どうしようかなあ、んー総理大臣とか??」 さすがに本人の前で雇ってください! なんて甘い事は言えないので適当に誤魔化す。 「はいはい、なんも考えてないのね。もう高三だよ?ちゃんと考えないと」 「わかってるよー安心して! 私の人生プランはもうカンペキだから!」 「ほんと?一応言っとくけど私の会社にあんたは雇ってあげないから」 「…!」 だからあなたはエスパーですか!?なんで私の考えていることすぐ分かるんだろう。 ってか、私の人生プランもう崩壊じゃん。なんて、頭の中の私が泣いていると、教室の反対にいた陸が私を呼んだ。 「おい!しおり!悪いけど窓閉めてくんね? 髪のセット、崩れちまうから」 なんて生意気なやつ!さすがに温厚(自称)な私も、あんた髪、と言いかけたところで 「お前髪ないやないか」 陸と同じグループで食べていた小野くんが、ペットボトルで陸の頭を頭を叩いた。 教室中が笑いに包まれる。いいねーこういうの。 頭を叩かれたのに、楽しそうな顔をしているのは、北川陸。 野球部なので、さっきもご指摘があった通り丸坊主。 実は、明日香と陸と私は、3年間一緒のクラスなのでそれなりに仲がいい。 高校生活を締めくくるに相応しい楽しそうな1年になりそうだー。なんて私は呑気なことを考えながら、残りの昼休みを過ごした。
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